ほてりを甘く見ないで ~将来の健康にも影響が~
見逃しがちな「ほてり」の深刻なサイン
前回、ほてりを放っておくと他の症状を次々と引き起こす「ドミノ倒し現象」についてお話ししました。でも、実はそれだけにとどまりません。ほてりの背景には、将来の体の健康に関わる深刻な変化が隠れていることが分かってきています。

海外研究が示す“血管機能の低下”との関連
海外の研究では、ほてりの強い女性ほど、血管の「伸展性(しんてんせい)」――つまり血管の広がりやすさ――が低下していることが報告されています。血管の伸展性が落ちると、血流の調節がうまくいかなくなり、将来的な動脈硬化のリスクが高まると考えられています。
糖代謝や炎症とも関係が
さらに、ほてりの程度が強いほど、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」との関連も明らかになってきました。インスリン抵抗性とは、血糖値を下げる働きをするインスリンがうまく作用しなくなる状態で、これが進むと血糖値が高くなりやすくなり、糖尿病や内臓脂肪の増加につながるとされています。
私たちの研究でも、強いほてりのある女性では、体内で慢性的な炎症が起こっている傾向があることがわかっています。これは、血管の壁に炎症が起こり、将来の動脈硬化につながる可能性があることを示唆しています。
将来の健康のために、いま相談を
「たかがほてり」と我慢してしまう方も多いかもしれませんが、将来の心臓病や糖尿病のリスクを考えると、早めの対処が大切です。不調を感じたら、ぜひ医師に相談してみてください。適切な治療によって、今も将来も健やかに過ごせる道が開けるかもしれません。

次回は、「ほてり」以外に見られる更年期症状について取り上げます。実は、気づきにくい症状や意外な不調もあるのです。
(執筆:安井医師)
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